年明けからアルツハイマー病新薬開始?
アルツハイマー病治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」が2023年9月25日に日本でも承認され、保険適応について議論が行われています。
*日本認知症学会学術集会での講習会では2023年12月下旬までに審査が終了するのでは?との事でした。
厚生労働省は、レカネマブ(商品名レケンビ)の使用について「最適使用推進ガイドライン」を作成することにしています。
その中に、投与医師に求められると予想される講習会が2023年11月26日、日本認知症学会学術集会会場(奈良)において開催され、受講してまいりました。
現在、ガイドライン策定中のため、当院が投与可能施設・医師に合致するかは未定ですが、認知症診療に力を注いでいる当院としまして、できる限り対応してきたいと考えています。
レカネマブ(商品名レケンビ)は、アルツハイマー病の原因の1つとされるアミロイドβを標的とする治療薬で、脳内に溜まったアミロイドβを除去することでアルツハイマー病の進行を抑制することを狙った治療薬です。
適応は「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症の進行抑制」で、体重1kgあたり10mgを2週間ごとに点滴で投与します。
承認された根拠となった治験では、投与18ヶ月時点で投与群がプラセボ群(未投与群)と比べて27%の悪化抑制が示されています。
注意点として、脳の腫れ(ARIA-E17.3%)や脳出血(ARIA-H17.3%)などの副反応が報告されました。
なお、アミロイドβに関する物質のひとつとしてアポリポ蛋白質Eがあります。
それに関わるAPOE遺伝子には主にε2、ε3、ε4の3種類があり、 2つ一組で遺伝子型を構成しています。
ε4を持つ場合はアルツハイマー病の発症リスクが高いとされ、アミロイド関連画像異常のリスクも高いとされています。
先に承認されたアメリカではAPOE4を持つかどうか投与開始前に検査することが推奨されていますが、APOE4の有無について調べることは日本では保険適応外となりますので恐らく、薬剤使用についての必要項目には含まれないと思われます。
現時点判明している内容についてまとめさせて頂きます。
治療対象
・アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度の認知症
MMSE-Jで22〜30、CDRで0.5が最多でした。
これは認知障害とすれば極軽度の段階です
MMSE-J:Mini Mental State Examination-Japanese
MMSEはアメリカで認知症の疑いのある人のために開発された検査で、MMSE-Jは日本語版のMMSEです。
全部で11問あり、2問文章と図形を本人に記載して頂きます。
30点満点の検査で、22〜26点が軽度認知症の疑い、21点以下が認知症の疑いが強いと判断しますが、この検査のみで認知症の診断は行いません。
CDR:Clinical Dementia Rating、臨床的認知症尺度
認知症の重症度を評価するためのスケールです。
記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭状況・興味・関心、介護状況の6項目について、5段階で重症度を評価します。
それらを総合して「健康(CDR0)」、「認知症疑い(CDR0.5)」、「軽度認知症(CDR1)」、「中等度認知症(CDR2)」、「重度認知症(CDR3)」の5段階に分類します。
・アミロイドβを認める
アミロイドβを証明するには、アミロイドPETと言う画像検査あるいは脳脊髄液検査の2種類から選択します
アミロイド PET
脳内に蓄積したアミロイドβ蛋白を可視化する画像検査です。 結果は視覚的 に判定され、「陽性」か「陰性」と判断されます。「陰性」 の場合は現在アルツハイマー病である可能性は非常に低いと判断します。
脳脊髄液検査
脳脊髄液は、脳や脊髄とそれを包む硬膜の間にある液体です。
脳脊髄液検査は、体をエビのように丸めて横向きになり、背骨の間に針を指して脳脊髄液を採取します。
施設要件
・診断やARIA(アミロイド関連画像異常Amyloid related imaging abnormalities)の画像所見の判断等ができる
・安全性の確認として、投与後、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、以降は6ヶ月毎にMRI検査を行い、ARIA発現の有無が確認できる
これまでのレカネマブに関する当院でのブログです。
アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」アメリカでは承認済!