少し高い血圧でも心臓の血管障害の危険は2倍に!
日本における心臓疾患における死亡順位は第1位の悪性新生物(いわゆる癌)についで第2位と高い疾患です。
この心臓疾患には高血圧は含まれず心臓の機能が低下する心不全、心臓を栄養する血管が動脈硬化によって詰まったり、その他の原因によって心臓にダメージが生じる心筋梗塞などの虚血性心疾患がほとんどを占めますが、高血圧がこれらの疾患に悪影響を与えていることは間違いありません。
一般的に心不全は息切れやむくみ、虚血性心疾患は胸の痛みなど自覚症状が分かりやすいですが、その原因である高血圧のみでは自覚症状はほとんど分からないため、健康診断などで高血圧を指摘されても自覚症状がないためにそのまま放置されてしまうことがあります。
ですが、この高血圧を放置しておくと心不全や虚血性心疾患をいつ発症するか分かりません。
日本高血圧学会は高血圧管理のガイドラインを2019年に血圧の分類を更新しましたが、血圧分類と心血管イベントとの関連についての情報が乏しい状態でした。
横浜市立大学の桑原 恵介氏らは、関東・東海地方に本社のある企業など10数社による職域多施設共同研究“Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study”(J-ECOHスタディ)に参加した高血圧の治療中ではない就労者8万1,876人(20〜64歳)を9年間追跡調査した結果を報告しました。
血圧分類は参加時の2010年また2011年の血圧値を「高血圧治療ガイドライン2019」に基づき、正常血圧、正常高値血圧、高値血圧、I度高血圧、II度高血圧、III度高血圧の6群に分類し、心血管イベント、心血管死亡、全死因死亡について解析を行いました。
結果として、334件の心血管イベント、75件の心血管死亡、および322件の全死因死亡がみられました。
正常血圧と比較して、心血管イベントの多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、正常高値血圧で1.98(1.49-2.65)、高値血圧で2.10(1.58-2.77)、Ⅰ度高血圧で3.48(2.33-5.19)、Ⅱ度高血圧で4.12(2.22-7.64)、およびⅢ度高血圧で7.81(3.99-15.30)でした。
→正常高値血圧(120-129/<80mmHg)でも心臓の 血管障害の危険が2倍!
最も集団寄与危険度割合が高かったのは高値血圧で17.8%、次いでI度高血圧で14.1%、正常高値血圧で8.2%でした。
*集団寄与危険度割合とは?
ある病気がどれだけ特定の原因によって引き起こされているかを示す割合です。
以上の結果から、少し高い血圧の状態から心臓に影響を起こす可能性があり、対策が必要であることが分かりました。
具体的な対策としては食事内容を注意する、運動習慣がない場合は運動を心がける、喫煙は行わないなどです。
私はこれまで、病気の内容によりますが130/80mmHgを治療の目安としていることが多かったですが、今後は患者さまの状態によっては120/80mmHgを治療の目安に変更し、治療に取り組んでいきたいと思います。
今後もおばた内科クリニックでは新しい医療情報を取り入れつつ、診療にあたらせて頂きます。
何かお困りのことや気になることがありましたら、いつでもご相談下さい。
高血圧治療ガイドライン2019より
正常血圧:<120/80mmHg
正常高値血圧:120-129/<80mmHg
高値血圧:130-139/80-89 mmHg
Ⅰ度高血圧:140-159/90-99 mmHg
Ⅱ度高血圧:160-179/100-109 mmHg
Ⅲ度高血圧:≧180/≧110mmHg
出典