デルタ株に対する新型コロナワクチンの有効性について
アルファ株からデルタ株への置き換わりが進み、デルタ株はアルファ株よりも感染性が高いことが示唆されています。
日本ではファイザー/バイオンテック社あるいは武田/モデルナ社のワクチン接種が中心となっていますが、アストラゼネカ社のワクチン接種も始まりました。
Jamie Lopez Bernalらはデルタ株に対するファイザー/バイオンテック社のワクチン(BNT162b2)とアストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)の有効性についてNEJM誌に報告しましたので、ご報告させて頂きます。
Jamie Lopez Bernalらは、症状のあるCOVID-19(コロナ)患者さんのワクチン接種状況と、症状のあるPCR検査陰性の患者さんのワクチン接種状況を比較。また、イギリスにおけるすべての症状のあるCOVID-19(コロナ)患者さんのデータを用いて、患者さんのワクチン接種状況に応じた変異株保有症例の割合を推定し、ファイザー/バイオンテック社のワクチン(BNT162b2)とアストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)のデルタ株への効果を推定しました。
なお、変異株については全ゲノムシークエンス解析を用いるとともに、TaqPath PCR法によるスパイク遺伝子標的の状態(陽性の場合はデルタ株、陰性の場合はアルファ株を保有)に基づいて同定しています。
ワクチン初回接種後の有効性は、アルファ株保有者で48.7%(95%信頼区間[CI]:45.5~51.7)、デルタ株保有者で30.7%(95%CI:25.2~35.7)であり、デルタ株保有者に対しては両ワクチンとも低い結果でしたが、2回接種後はアルファ株保有者で87.5%(95%信頼区間[CI]:85.1~89.5)、デルタ株保有者で79.6%(95%CI:76.7~82.1)と予防効果が示されました。
なお、2回接種後の有効性は、ファイザー/バイオンテック社のワクチン(BNT162b2)でアルファ株93.7%(95%CI:91.6~95.3)、デルタ株88.0%(95%CI:85.3~90.1)、アストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)でそれぞれ74.5%(95%CI:68.4~79.4)、67.0%(95%CI:61.3~71.8)であり、ファイザー/バイオンテック社のワクチン(BNT162b2)がより効果が期待される結果でした。
今回の報告では、ファイザー/バイオンテック社のワクチン(BNT162b2)とアストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)は1回の接種では感染力が強いとされるデルタ株に対し予防効果は十分とは言えませんが、2回接種することにより一定の効果があると言えます。
これからも十分な検討が必要で、ワクチン接種は皆様の判断によるものですが、感染力の強いデルタ株が広がり、医療体制が逼迫している現在、少しでもご自身やご家族、周りの方々を守るためにも2回のワクチン接種をご検討されることをおすすめします。
原著論文
Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant