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アルツハイマー型認知症治療の未来

[2021.07.04]

アルツハイマー型認知症の治療薬はいくつかありますが、症状の改善が期待できるものではあるものの、病気の根本的な改善は難しい状態でした。
aducanumabはアルツハイマー型認知症の原因とされる脳内アミロイドプラークの沈着の有意な減少を認めており、根本的な治療の改善が期待できます。

バイオジェン社とエーザイ社が共同で開発していた治療薬アデュカヌマブaducanumabはアルツハイマー型認知症の原因とされる脳内アミロイドβに作用するものとして期待されていましたが、2019年3月効果が見込めないと一旦開発が中止されました。

ですが、試験中止後に得られたデータを含め再検討したところ、効果が期待できる結果が得られ2021年6月7日米食品医薬品局(FDA)にて条件付きで承認されました。

アデュカヌマブはアミロイドβを標的とした抗アミロイドβ抗体で、脳内に沈着したアミロイドβを取り除くことにより、症状が改善するとされています。

注意点としてアデュカヌマブは2つの臨床試験(ENGAGE、EMERGE)結果から1度は効果が達成される可能性が低いと試験中止されたことです。

今回承認された根拠は、EMERGE試験の追加情報として、アデュカヌマブの高用量投与群では主要評価項目できある臨床症状の改善に加え、アデュカヌマブ低用量群と高用量群ともにアミロイドプラークの沈着が非投与群と比べ減少していましたが、ENGAGE試験では効果の改善が確認されていません。

今回条件付きで承認された根拠はこの事により、今後ランダム化比較試験RCTでその効果が確認できない場合は承認が撤回される可能性があります。
なお、日本では2020年12月に承認申請が行われています。

認知機能障害に対する根本的な治療薬の承認は世界初であり、高齢化に伴い認知症患者さんは増え続けており、日本でも効果と安全性が確認されれば早期承認と使用が望まれます。

アデュカヌマブ
アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβに作用し、認知症治療の根本的な治療が期待される
アミロイドβプラーク減少率はENGAGE試験では59%の減少(p<0.0001)、EMERGE試験では71%の減少(p<0.0001)、PRIME試験では61%の減少(p<0.0001)。
特に注意する副作用としてアミロイド関連画像異常(Amyloid related imaging abnormalities;ARIA)が挙げられている。
ARIAは血液脳関門の障害による脳浮腫による変化のARIA-Eと微小出血によるヘモジデリン沈着によるARIA-Hに大別される。
ARIA-Eでは脳浮腫の程度により頭痛や錯乱などの精神症状、吐き気や嘔吐、歩行障害が認められ、ARIA-Hは健常者ではその危険性は低いが、脳血管障害を持つ高齢者では注意が必要であり、治療開始前や治療開始後も定期的頭部MRI検査による評価が必要とされる。

文責:尾畑 十善
最終更新日時:2021年7月4日

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