月1回の注射で片頭痛の予防治療が可能に!
片頭痛は10〜30歳ごろに発症し、右や左など片側を優位にズキズキとした拍動性の頭痛を特徴とし、日本国内の有病率は840万人にのぼるとされます。
患者さんによっては頭痛により日常生活に支障を来すことがあり、月に10回以上の頭痛発作がある場合は、薬物乱用頭痛を予防するためにも片頭痛の予防治療を行います。
ですが、予防治療を行っても頭痛の改善が乏しいこともあります。
今回、月に1回の注射による治療で片頭痛発作予防が期待できる治療薬が日本でも製造承認されましたので、報告させて頂きます。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)は片頭痛発作時に三叉神経の末梢で認められる神経伝達物質で、疼痛を引き起こします。
CGRPを投与することにより、大部分の片頭痛患者さんに片頭痛発作が誘発されることが示されており、今回製造承認された薬剤(抗CGRP抗体;ガルカネズマブ)はこのCGRPの作用を阻害することにより片頭痛発作を抑制します。
国内第Ⅱ相試験;CGAN試験
459例の反復性片頭痛患者さんをプラセボ投与群(実際の薬剤ではない群)230例、120mg群115例、240mg群114例に振り分け。
患者さんの8割以上は女性で、片頭痛と診断されてから3群とも20年経過しており、頭痛日数はおよそ8〜9日であった。
1ヶ月あたりの片頭痛日数(monthly headache day:MHD)の変化量を6ヶ月間検証したところ、効果は1ヶ月後から認められ、1ヶ月あたり3.6日頭痛日数が減少し、約半数は頭痛の発作日数が半分に減り、1割弱ではありますが頭痛が無くなりました。
なお、120mg群と240mg群で効果について、有効性に大きな差はありませんでした。
国内第Ⅲ相長期投与試験;CGAP試験
CGAN試験を完了した日本人反復性片頭痛(Episodic migraine;EM)患者246例及び新規参加の日本人慢性片頭痛(Chronic migraine:CM)患者65例の合計311例を対象に1年間投与したときの安全性と忍容性を検討。
EM患者さんでは、CGAN試験での有効性を維持あるいはさらに改善を認め、CM患者さんにおいても、EM患者さんと同様に投与1ヶ月後より頭痛日数の減少を認め1年間維持された。
今回製造承認された薬剤は注射剤ですが、20年におよび月に3日に1度の割合で頭痛のあった患者さんに効果が認められたことから、1日でも日本でも早く使用できればと思います。
また、同様の機序の経口薬も開発中であり、今後片頭痛の予防治療が向上し、少しでも頭痛で悩まれている患者さんが救われればと期待しています。
これからもおばた内科クリニックでは頭痛やパーキンソン病、脳血管障害などの脳神経疾患だけではなく、糖尿病などの生活習慣病についてなど様々な医療情報を可能な限り情報発信させて頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
医薬品インタビューフォーム
エムガルティ®皮下注 120 mg オートインジェクター
エムガルティ®皮下注 120 mg シリンジ