甲状腺の働きが異常になる疾患 まとめ
こんにちは。内分泌代謝・糖尿病内科の勝原俊亮です。
甲状腺は、私たちの体の代謝をコントロールする重要な器官です。しかし、甲状腺の機能が正常に働かなくなると、様々な症状が現れます。今回は、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症を引き起こす主な疾患について、それぞれの病名、症状、診断方法、治療法を解説します。
甲状腺機能亢進症を引き起こす疾患
1. バセドウ病(Basedow病)
概要: バセドウ病は自己免疫性疾患であり、甲状腺を刺激する自己抗体(TSH受容体抗体, TRAb)が過剰に産生されることで甲状腺ホルモンが増加します。
主な症状:
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動悸、頻脈
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発汗過多
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体重減少
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手の震え(振戦)
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眼球突出(バセドウ眼症)
診断方法:
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血液検査(FT3, FT4, TSH, TRAb)
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甲状腺超音波検査
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シンチグラフィー(必要に応じて)
治療法:
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抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピルチオウラシル)
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放射性ヨウ素治療
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甲状腺全摘手術(重症例)
2. 無痛性甲状腺炎
概要: 自己免疫性の炎症によって一時的に甲状腺ホルモンが放出され、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。
主な症状:
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軽度の動悸や疲労感
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体重減少
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無痛性の甲状腺腫大
診断方法:
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血液検査(FT3, FT4, TSH, 抗TPO抗体, 抗Tg抗体)
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甲状腺超音波検査
治療法:
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通常は自然に回復するため、対症療法のみ
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β遮断薬(動悸や震えの軽減目的)
3. 亜急性甲状腺炎
概要: ウイルス感染によって甲状腺に炎症が起こり、一時的に甲状腺ホルモンが漏れ出すことで甲状腺機能亢進症を引き起こします。
主な症状:
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甲状腺の強い痛み
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発熱
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全身倦怠感
診断方法:
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血液検査(FT3, FT4, TSH, CRP, 赤沈)
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甲状腺超音波検査
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放射性ヨウ素摂取率検査
治療法:
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鎮痛薬(NSAIDs)
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重症例ではステロイド療法
甲状腺機能低下症を引き起こす疾患
1. 橋本病(慢性甲状腺炎)
概要: 自己免疫性疾患で、甲状腺が破壊されることで甲状腺ホルモンの産生が低下します。
主な症状:
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倦怠感、うつ症状
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体重増加
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寒がり
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皮膚の乾燥
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便秘
診断方法:
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血液検査(FT3, FT4, TSH, 抗TPO抗体, 抗Tg抗体)
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甲状腺超音波検査
治療法:
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甲状腺ホルモン補充療法(レボチロキシン)
2. 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎の回復期
概要: 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎の初期には甲状腺ホルモンが過剰になりますが、その後一時的に甲状腺機能低下症を呈することがあります。
主な症状:
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倦怠感
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皮膚の乾燥
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体重増加
診断方法:
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血液検査(FT3, FT4, TSH)
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甲状腺超音波検査
治療法:
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ほとんどのケースで自然回復
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症状が強い場合はホルモン補充療法を考慮
3. 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
概要: 生まれつき甲状腺の発育異常やホルモン合成の異常がある疾患です。
主な症状:
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新生児期の黄疸の遷延
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成長・発達の遅れ
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低体温、低活動性
診断方法:
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新生児マススクリーニング(TSH測定)
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血液検査(FT4, TSH)
治療法:
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甲状腺ホルモン補充療法(レボチロキシン)を早期に開始
まとめ
今回は簡単に甲状腺の機能性疾患の概要をまとめました。このほかにもまれな疾患や、薬による副作用、不適切な補充により機能の異常がおこることもあります。
甲状腺の病気は、体のさまざまな機能に影響を与えるため、正確な診断と適切な治療が重要です。特に自己免疫性疾患であるバセドウ病や橋本病は、日本人に多い疾患であり、早期発見・治療が必要です。気になる症状がある場合は、いつでもご相談ください。