一部の糖尿病治療薬で認知症がリスク低下の可能性
糖尿病は血管性認知症(脳梗塞や脳出血による認知症)の危険因子のみならず、アルツハイマー型認知症との関係も指摘されています。
デンマークのBispebjerg-Frederiksberg病院のJørgen Rungby氏らは2019年6月アメリカ糖尿病学会にて、糖尿病治療薬と認知症の関係を検討し、一部の糖尿病治療薬が認知症の発症リスクを軽減させる可能性について報告しました。
研究は、2型糖尿病患者17万6250例を対象とし、糖尿病治療薬が認知症発症リスクに与える影響を検討しました。 糖尿病治療薬として、インスリン、メトホルミン、SU薬またはグリニド系薬、チアゾリジン系薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、アカルボースに分類。
結果は糖尿病治療薬の使用者では、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬でリスクが半減。 糖尿病治療薬の使用歴がない者では、メトホルミン、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬でリスクが低減していました。なお、これらの治療薬の使用量増加に伴い認知症発症のリスクは低減することが示唆されましたが、治療薬を複数用いても効果は認められませんでした。
Medical Tribuneより抜粋 https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0612520413/
Rungby氏は「2型糖尿病患者において、メトホルミン、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬の使用は認知症リスクの低下と関連していた」と結論しました。
注意点は、高齢者糖尿病の特徴として、発汗・動悸・手のふるえなどの低血糖症状が目立たず、ふらふらする・動作がぎこちない・目がかすむなどの非典型的な症状が出やすいことです。2017年に報告された「高齢者糖尿病診療ガイドライン」では、重症低血糖が心配されるインスリン、SU薬またはグリニド系薬の使用がある患者さんでは、血糖コントロール目標として、認知機能が正常な方でもHbA1cは8.0%未満とし7.0%以下にならないようにする。中等度以上の認知症がある患者さんでは7.5%以下にならないように加減している事です。
現在糖尿病の診断、あるいは糖尿病予備群の診断がある患者さんで、認知症が心配としてもご自身の判断で薬は調整せずに、かかりつけの先生に相談されて下さい。