パーキンソン病による歩きにくさ
パーキンソン病は、手足の震えや、動かしにくさなど運動障害を中心とする神経難病です。
L-ドパなどの薬による治療に加え、脳深部刺激療法などの外科的治療やリハビリテーション治療を行っていきます。
運動症状の一つである歩きにくさは、日常生活に悪影響を与えるほかに、転倒の要因の一つとなります。
高齢となりますと骨粗鬆症などによる骨折の危険が高まり、転倒による骨折により寝たきりにならないためにも、歩きにくさに対する対策は重要と考えます。
パーキンソン病の歩行障害の特徴
・腕の振りが左右で異なる
体の動きの悪い側の腕の振りが低下しています
・足をするような形で歩く
・歩幅が小さく、小刻みに歩く
・歩く速度が低下する
・歩きだしに時間がかかり、歩きだすと良いが、段々と歩く速度が早くなり、止まりにくい
・歩ける距離が段々と短くなる
特に注意したい歩行障害:すくみ足
パーキンソン病におけるすくみ足は一般に考えられているよりも頻度は多く、最近の研究では6620例中47%に認められました。
病気にかかっている期間が長く、病状が進んでしまった患者さんに多く認められます。
足の動き・運びが極端に悪くなってしまうことで、歩きだし事、方向転換時、障害物のある場所、道が狭くなる、目標に近づいた時に出現しやすいです。
すくみ足に対する自分でできる対処法
・自宅の床に物を置かないようにする
・歩くときに、踵から足をつくように意識する
・太ももや膝を高く上げて歩くように意識する
・すくみやすい場所にテープなどで線を引く(矛盾性運動)
・方向転換時は、大きく回るように意識する
・すくみ足が出現した場合は、一度下がる
*後ろにバランスを崩して転倒しないように注意が必要です
すくみ足の治療をどうするか?
すくみ足の治療については、まずウェアリングオフの有無を確認します。
ウェアリングオフとは、パーキンソン病治療薬である、L-ドパの効果が短くなり、体の動きが悪くなる、震えが出るようになることを言います。
スイッチは切れたように体の動きがわるくなるためオフと呼びます。
また、体の動きが良いときはオンと呼びます。
ウェアリングオフがある場合、すくみ足がオフのときに認められるか、オンのときに認めるかを確認します。
オフのときに認める場合は薬の調整を行っていきますが、オンのときに認める場合は、残念ながら治療が難しいことが多いです。
すくみ足に対する薬(ドロキシドパ)の効果
2001年までのエビデンス(根拠)として、6例の報告があります。
このうち、パーキンソン病の患者さん202例を対象とした報告では、プラセボ(偽薬;有効成分が入っていない薬に似せたもの)に比べ有意に改善したことが示されていますが、中等度以上の改善は約20%にとどまっていました。
その他の5報告でも、すくみ足の改善が報告されています。
すくみ足に対する運動療法
パーキンソン病に対する運動療法として、全身運動療法、トレッドミル(屋内でランニングやウォーキングを行うための健康器具を用いた運動)、キュー訓練(刺激を元いた訓練)、ダンス、武道など行った場合、歩行の平均速度やすくみの改善が報告されています。
キュー訓練とは聴覚的な手がかりや視覚的な手がかりを用いた訓練方法です。
聴覚的な手がかりとして、メトロノームや実際に「右」もしくは「左」と声を出すなどで、視覚的な手がかりとして、リハビリの先生などが患者さんの左右のいずれかの肩を指したりする方法があります。
参考出典:パーキンソン病診療ガイドライン2018