日本人高齢者における高コレステロール血症治療薬と認知症との関係
これまでの研究で、高コレステロール血症治療薬の一つであるスタチンの使用は、高コレステロール血症の治療のみならず、認知症のリスクを下げる報告があります。
しかし高齢社会化が進んでいる日本において、この関連について十分な検討はされていませんでした。
今回、大阪大学の研究チームが65歳以上の日本人を対象に、スタチンの使用と認知症のリスクとの関連性を調査し、報告しました。
方法
2014年4月から2020年12月までの間に17自治体から収集した医療および介護保険の請求データを含む、長寿改善と公正なエビデンス(LIFE)研究のデータを利用しました。年齢、性別、自治体、コホート参加年を基に、1症例に対して5つの対照をマッチさせたネステッドケースコントロール研究を実施しました。条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比(OR)および95%信頼区間(95% CI)を計算しました。
結果
この研究には57,302例の症例群と283,525例の対照群が含まれ、参加者の59.7%が女性でした。潜在的な交絡因子を調整した後、スタチン使用は認知症(OR: 0.70、95% CI: 0.68-0.73)およびアルツハイマー病(OR: 0.66、95% CI: 0.63-0.69)のリスク低下と関連していることが分かりました。非使用者と比較した場合の認知症のオッズ比(OR)は、用量分析において次の通りでした。
1日当りの総標準投与量(TSDD)
TSDD 1〜30:OR:1.42、95%CI:1.34〜1.50
TSDD 31〜90 :OR:0.91、95%CI:0.85〜0.98
TSDD 91〜180 :OR:0.63、95%CI:0.58〜0.69
TSDD 180以上:OR:0.33、95%CI:0.31〜0.36
まとめ
スタチンの使用は、日本の高齢者において認知症およびアルツハイマー病のリスク低下と関連しています。累積スタチン投与量が少ない場合には認知症リスクが増加する一方、累積スタチン投与量が多い場合には認知症の保護因子となりうる結果でした。
おばた内科クリニックではこれからも、認知症や生活習慣病などの健康情報を定期的に発信させて頂きます。
今後とも、よろしくお願いいたします。
出典