アルツハイマー病の新薬「ドナネマブ(ケサンラ)」って何?
2024年9月24日、ヒト化抗N3pGアミロイドβモノクローナル抗体ドナネマブ(遺伝子組換え)(商品名ケサンラ点滴静注液)の製造販売が承認されました。
適応は「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」で昨年承認されたレカネマブ(商品名レケンビ点滴静注液)と同様となります。
投与方法については、レカネマブが「10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する」のに対し、ドナネマブは「1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する」と投与間隔など簡易となっています。
アルツハイマー病は、記憶障害を中心に認知機能や日常生活機能に影響を与え、認知症の原因として一番多い疾患です。
これまで認知症に対する根本的な治療方法がありませんでしたが、昨年のレカネマブに加え、新たな治療法の選択肢が増えたことは、大変意義のあることと考えます。
アルツハイマー病は脳内にアミロイドβ(Aβ)が蓄積され、アミロイドβプラーク(老人斑)が形成され、その後にタウと呼ばれるタンパク質が蓄積することによって神経細胞死、脳萎縮が続けて起こり、発症するとされています。
ドナネマブは、このアミロイドβプラーク(老人斑)をターゲットとした抗体で、プラークに結合することで貪食細胞が脳内に蓄積したプラークを除去し、症状の進行を遅らせる薬剤とされています。
先行して使用可能となったレカネマブも作用部位が異なりありますが、同様の機序をもった薬剤となります。
ドナネマブの有効性について、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症患者さん(日本人を含む)を対象とした国際共同第III相プラセボ対照二重盲検比較試験(AACI試験)では、薬剤を使用しない郡と比べて、iADRSの低下を22.3%、CDR-SBの低下を28.9%抑制しました。
脳内アミロイド(アルツハイマー病の原因物質)については、ケサンラ群ではアミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少していました。
なお、重大な副作用としてはレカネマブと同様にアミロイド関連画像異常(ARIA)が36.8%に認められました。
iADRS:Integrated Alzheimer's Disease Rating Scale
アルツハイマー病の手段的日常生活機能及び認知機能を評価する尺度
CDR-SB:Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes
記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味・関心、介護状況の6項目について、障害の程度を評価
ケサンラの有効性データ1(中医協・合同部会1 241009)より
ケサンラの有効性データ2(中医協・合同部会2 241009)より