脂肪肝について *2020年のNAFLD/NASH診療ガイドラインより
健康診断で糖尿病や高血圧、高脂血症を指摘されたことはありませんか?
これらのいわゆる生活習慣病は脂肪肝の原因となりますが、日本における健康診断を受診された方を対象とした研究では30%前後に非アルコール性脂肪性肝疾患が認められたと報告されています。
脂肪肝は肝硬変や肝細胞癌を引き起こすことがあり、注意が必要です。
肝細胞癌の1000人あたりの年間の発癌率は、非アルコール性脂肪性肝疾患では0.44人ですが、非アルコール性脂肪肝炎となりますと5.29人と高くなり、肝硬変まで悪化しますと0.45〜22.6人まで上昇してしまいます。
もし健康診断で糖尿病や高血圧、高脂血症を指摘されたことがありましたら、お腹のエコー検査(腹部エコー)を受けられることをおすすめします。
また、前回の検査から時間が経過している方も再検査をおすすめします。
腹部エコー検査
左図が脂肪肝のエコーですが、脂肪が肝臓に沈着することにより、右図の正常の方と比べると肝臓が全体的に白っぽく写っています
腹部エコー検査で脂肪肝が確認されましたら、肝臓の線維化の評価を行いますが、評価としてはFIB-4 indexを用います。
これは年齢×AST/血小板数×√ALTから求めることができ、1.3以下(70歳以上では2.0未満)であれば問題ありません。しかしそれよりも高い数値、特に2.67以上となりましたら、肝臓を専門とされる施設での精密検査が必要となります。
非アルコール性脂肪性肝疾患は肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病やアルコールとの関連が考えられているため、これらの予防や治療が重要です。
治療の基本は食事と運動を心がけることで改善が期待できます。
アルコール摂取量の上限はエタノール換算男性30g/日、女性20g/日とされています。
計算式は「アルコール度数(%)×アルコール量(mL)×アルコール比重(0.8)」です。
例えばアルコール度数5%のビール500mlですと、0.05×500×0.8=20となりますので、女性であれば500mlのビール1本が上限となります。
生活習慣病や脂肪性肝疾患は自覚症状としては何もありませんが、放置しますと心臓や脳の血管障害のみならず、肝細胞癌などの重篤な疾患の原因となりえますので、日頃の健康に対する心がけをお願い致します。
*線維化とは?
肝臓に障害が起きますと、一部の肝細胞は死んでしまいますが、周りの肝細胞が付着することで肝臓は再生していき、時間の経過とともに完全に回復します。しかし、障害が続きますと完全な回復が追いつかなくなり、組織が固くなっていまい、この固くなることを線維化と呼びます。
硬い部分は肝臓としての機能を果たすことができずに、その範囲が広くなりますと肝臓の機能が低下してしまいます。
この状態を肝硬変と呼びますが、肝硬変は肝細胞癌の発症の要因となってしまうため、いかに肝硬変まで悪化しないようにするかが重要となります。