メニュー

新たなアルツハイマー病治療薬〜レカネマブの続報〜

[2023.04.16]

アルツハイマー病は、進行性の神経変性疾患であり、アメリカでは認知症の主な原因であり、高齢者の主要な死因の一つとなっています。

レカネマブは、アミロイド線維を標的とするヒト化IgG1モノクローナル抗体で、早期アルツハイマー病(軽度認知障害(MCI)または軽度アルツハイマー病)の治療薬としてアメリカではFDA(食品医薬品局)より迅速承認されています。

 

2023年4月アミロイド病理を有する早期アルツハイマー病患者さんにおいて標準治療群(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤もしくはメマンチン投与)とレカネマブ群(標準治療+レカネマブ投与)の長期的臨床経過の結果が報告されました。

 

レカネマブと標準治療を受けた患者さんにおいて、CDRで測定される臨床的低下が27%減少すると、患者さんの生涯において、標準治療のみと比較して軽度アルツハイマー病に進行する患者数が7.5%減少することが明らかになりました。

また、レカネマブの投与により、中等度、重度のアルツハイマー病への進行がそれぞれ13.7%、8.8%防止されると予測されました。

*CDR

認知症の重症度を判定するための評価指標のひとつ

CDR=0.5を軽度認知障害(MCI)、CDR=1以降を認知症として捉えることが多い

 

レカネマブと標準治療を併用した患者さんは、標準治療のみで治療した患者さんと比較して、軽度アルツハイマー病への進行は2.71年(標準治療vs.レカネマブ:2.35年vs.5.06年)、中等度への進行は2.95年(同:5.69年vs.8.64年)、高度への進行は2.24年(同:8.46年vs.10.79年)遅くなり、介護施設への入所が0.60年(同:6.25年vs.6.85年)遅くなり、施設での介護を必要とする患者数が4.9%減少しました。

なお、追加解析を行ったところ、より早期の軽度認知障害(MCI)の段階でレカネマブ投与を開始した場合、病態進行を遅らせる効果が、軽度への進行が2.55年(同:2.46年vs.5.01年)、中等度への進行は3.15年(同:6.02年vs.9.17年)遅延とさらなる効果が期待されました。

 

今回の報告から、レカネマブが早期アルツハイマー病の方に対して、疾患の進行を遅らせ、その効果はより早期の段階で効果がより期待できるものでした。

日本では現在承認待ちの状態ですが、現在出来る範囲での治療を行いアルツハイマー病の状態の悪化を抑えること、より早期の段階から治療が出来るように物忘れが気になる方は病院を受診して頂き、認知症であるのか、軽度認知障害であるか、年齢にともなうものなのかなど現状を把握しておくことが大事と考えます。

参考出典

A Path to Improved Alzheimer's Care: Simulating Long-Term Health Outcomes of Lecanemab in Early Alzheimer's Disease from the CLARITY AD Trial.

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME