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ワクチンで予防できる感染症(肺炎球菌感染症)

[2022.01.02]

ワクチンで予防が期待できる感染症としてインフルエンザウイルスが有名ですが、最近は新型コロナウイルス感染症に対するワクチンも積極的に行われています。

ほか以前は小児に行われていた肺炎球菌に対するワクチン(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)、商品名:ニューモバックスNP)が2014年より5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人を対象に定期接種が開始となりましたが、2019年度以降さらに5年間の期限で、同年齢を対象に定期接種が継続されています。

肺炎球菌は肺炎の原因となる細菌ですが、成人の市中肺炎の原因として38%と最も多いです。

また、肺炎球菌は肺炎だけではなく、中耳炎や副鼻腔炎、髄膜炎の原因にもなり、特に髄液や血液中に肺炎球菌が侵入すると菌血症を伴う侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:以下「IPD」)と重度の感染症となり、致命率が6%台と高いため注意が必要です。

よって、IPDの発症を防ぐためにも体調管理に加え、肺炎球菌ワクチン接種による対策が重要です。

肺炎球菌の感染のメカニズム

 菌の表面には莢膜という全体を覆う膜があり、その膜があることによって、体の免疫の働きが低下し病原性が発揮されます。

 膜は多糖体から作られており、肺炎球菌には97種類の型が報告されています。

 この型の一つに感染し治癒しますとその型に対して免疫が獲得できますが、別の型には感染しますので、肺炎球菌に対する免疫を獲得するにはいかに様々な莢膜に対しての免疫を獲得するかがポイントとなります。

体の免疫については、主にB細胞とT細胞が働きます

 B細胞が働く免疫反応:抗体産生

  骨髄から作られる白血球の1種で、リンパ球に分類される。

  異物であるウイルスや細菌に対して、抗体を作って攻撃したり、メモリーB細胞となって感染の記憶を作り、次回の感染に備える働きがあります。

 T細胞が働く免疫反応:細胞性免疫

  B細胞による免疫反応と異なり、抗体は作らずに細胞自体が異物を攻撃します。

日本における肺炎球菌ワクチンはおもに2つあり、それぞれ作用機序や莢膜に対する反応が異なります。

1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕

23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(以下「PPSV23」)は、莢膜多糖体からなる不活化ワクチンで、23種類の莢膜型を有し、T細胞には影響せずに、B細胞に作用して免疫を獲得します。

PPSV23の予防効果としては、接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを39%減少させ、すべての肺炎球菌による市中肺炎を27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎を33.5%減少させたと国内より報告されています。

PPSV23の注意点は、時間が経つことによりその免疫反応は低下していくことです。

初回接種後の予防効果は3〜5年で低下するとされていますが、再接種により初回接種時と同等の免疫を獲得されるとされていますので、接種後5年以上の期間をあけて再接種することも良いとされています。

2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔商品名:プレベナー13水性懸濁注〕

沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(以下「PCV13」)は、莢膜多糖体に無毒化したジフテリア蛋白を結合させた蛋白結合型の不活化ワクチンで、13種類の莢膜型を有し、T細胞とB細胞に作用して免疫を獲得します。

もともとは小児に対する7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)がPCV13に置き換えられたもので、2014年より高齢者にも接種が可能となり、2020年5月からは全年齢に適応が拡大されました。

PCV13の予防効果としては、高齢者のワクチン血清型のIPDを47〜57%減少させ、ワクチン血清型の肺炎(非侵襲型)を38〜70%、すべての原因の肺炎を6〜11%減少させたとの予防効果が諸外国より報告されています。

肺炎球菌ワクチン(PPSV23とPCV13)の比較 *ケアネットより抜粋

高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種に関する考え方

*日本呼吸器学会・日本感染症学会の合同委員会による「考え方」

【PPSV23を接種したことがない方】

定期接種として、PPSV23の接種を検討します。

可能であれば、PPSV23とPCV13の両方の接種をお勧めします。

その根拠としましては、先にPCV13を接種することにより、13の血清型の莢膜に対してメモリーB細胞が作用しますが、後に接種するPPSV23の2つのワクチンに共通する12の血清型に対する莢膜に対しブースター効果が期待されることです。

PPSV23とPCV13の両方を接種される場合はPCV13接種後6カ月から4年以内にPPSV23の接種が適切と考えられています。

PPSV23は公費助成制度の対象ですが、いつでも接種できるものではなく、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳となっているため、PPSV23を接種したことがないかたは、PCV13接種をあわせて検討して頂くことをお勧めします。

【PPSV23を接種したことがある方】

PPSV23接種から1年以上あけてからPCV13接種を行う。

参考サイト・文献

肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第11回

23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(肺炎球菌ワクチン)ファクトシート

成人侵襲性肺炎球菌感染症に対する23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの有効性

Serotype-specific effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumococcal pneumonia in adults aged 65 years or older: a multicentre, prospective, test-negative design study

Use of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine and 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Among Adults Aged ≥65 Years: Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices

65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第 3 版 2019-10-30)

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