認知症(物忘れ)発症リスクの予測が可能に?
10年以内に認知症を発症する可能性がどの程度あるのか、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らの論文が「Alzheimer's & Dementia : Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring」に2021年7月28日掲載されました。
九州大学では福岡市に隣接した糟屋郡久山町にて1961年から脳卒中や心血管疾患の研究を行っており、最近では研究テーマが脳卒中や心血管疾患に加えがん、糖尿病、認知症などの生活習慣病全体に広がっています。
今回の報告では、久山町研究のデータをもとに、認知症発症リスクがどの程度あるかが開発されたことが報告されています。
モデル開発のために1988年12月から2012年11月までの、65歳以上の795人を対象に調査を行っています。
具体的には、認知症の検査を5回行い、認知症の疑いがある方には画像検査を含めた検査を追加で行い認知症発症であるのかの診断を行っています。
24年間の経過で364人が認知症と診断され、解析の結果認知症発症の予測因子として年齢、性別、教育歴、高血圧の有無、糖尿病の有無、BMI(身長と体重から肥満度をみる指標)、脳血管障害の既往、喫煙の有無、身体活動レベルが抽出されました。
この結果をもとに開発された予測モデルでは、項目ごとに点数を設定し合計点数に応じて10年以内の認知症発症リスクを推測します。
例えば、合計点数が10点の場合は「10年以内に認知症を発症するリスクが57%ある」と考えます。
年齢
65~69歳:0点
70~74歳:2点
75~79歳:3点
80~84歳:5点
85歳以上:7点
性別
男性:0点
女性:1点
教育歴
教育歴9年以上:0点
教育歴9年以下:1点
高血圧の有無
無:0点
有:1点
糖尿病の有無
無:0点
有:2点
BMI(身長と体重から肥満度をみる指標:身長m÷体重kg÷体重kg)
18.5以上:0点
18.5以下:1点
脳血管障害の既往
無:0点
有:2点
喫煙の有無
無:0点
有:1点
身体活動レベル:「ほとんど一日中座っているか横になっている」であるか否か
「ほとんど一日中座っているか横になっている」ない:0点
「ほとんど一日中座っているか横になっている」である:2点
*出典での選択肢としては、
「ほとんど一日中座っているか横になっている」、「座っている、立っている、歩いている、の混在」、「歩いている」、「重労働」から選択
合計点数:10年以内に認知症を発症するリスク
0点:4%
1点:5%
2点:7%
3点:10%
4点:13%
5点:17%
6点:22%
7点:29%
8点:37%
9点:46%
10点:57%
11点:68%
12点:79%
13点以上:80%以上
今回報告された論文でのポイントは、このモデルは脳神経内科や脳神経外科、精神科、老年科など専門医(医師)である必要はなく、どなたでも利用できることと考えます。
これを用いることで、ご自身で認知症発症のリスクがどの程度あるかを認識し、発症のリスクが高い方は生活習慣を改めるなど心がけて頂き、認知症発症のリスクを少しでも下げ、今の生活を維持することができればと思います。
出典:Development of a dementia prediction model for primary care: The Hisayama Study