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アルツハイマー病リスク28%減!コレステロール管理で始める認知症対策

[2025.06.14]

認知症は、私たちの記憶や思考能力に影響を与える病気で、高齢化が進む日本では深刻な社会問題となっています。

現在、日本では約700万人が認知症と診断されており、65歳以上の5人に1人が認知症になると予想されています。

しかし、最近の研究で希望の光が見えてきました。悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール(以下、LDL-C)を適切に管理することで、認知症のリスクを大幅に減らせることが明らかになったのです。

この記事では、脳神経内科専門医・総合内科専門医の視点から、コレステロール管理と認知症予防の関係について詳しく解説します。

 

【画期的な発見】LDL-C70未満で認知症リスクが26%も減少

韓国の研究チームが行った大規模な研究により、LDL-Cの数値と認知症リスクの関係が明確になりました。

この研究では、韓国の11の大学病院で約22万人の患者さんを対象に調査が行われました。

研究の結果、LDL-Cを70mg/dL未満に保った人は、130mg/dL以上の人と比べて、認知症全体のリスクが26%も低下することが判明しました。

さらに驚くべきことに、アルツハイマー病関連認知症(ADRD)については、28%ものリスク低下が確認されたのです。

これまでコレステロールが脳に与える影響については議論が分かれていましたが、この研究により具体的な数値目標が示されました。

LDL-Cを70mg/dL未満に管理することで、多くの人が認知症のリスクを下げることができるという、極めて重要な発見なのです。

 

【スタチンの効果】薬物治療でさらなるリスク軽減が可能

LDL-Cを下げる薬として最も一般的なのが、スタチンという種類の薬です。

スタチンは、コレステロールを作る酵素の働きを抑えることで、血液中のLDL-Cを効果的に下げる薬です。

研究では、LDL-Cが70mg/dL未満の人の中で、スタチンを使用している人とそうでない人を比較しました。

その結果、スタチンを使用している人は、使用していない人と比べて、認知症全体のリスクがさらに13%低下し、アルツハイマー病関連認知症のリスクも14%低下することが分かりました。

これは、スタチンにはコレステロールを下げる効果だけでなく、脳を守る「神経保護作用」があることを示しています。

スタチンは血管の炎症を抑えたり、血流を改善したりする効果もあるため、脳の健康維持に多面的に働きかけているのです。

ただし、薬の使用については必ず医師と相談し、個人の健康状態に合わせて判断することが重要です。

 

【実践的な管理法】日常生活でできる認知症予防対策

LDL-Cを適切に管理するためには、生活習慣の改善が基本となります。

まず食生活では、飽和脂肪酸を多く含む食品(バター、チーズ、脂身の多い肉など)の摂取を控えることが大切です。

代わりに、魚類、特にサバやイワシなどの青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、コレステロール管理に効果的です。

野菜や果物、全粒穀物を中心とした食事を心がけることで、食物繊維がコレステロールの吸収を抑制してくれます。

運動習慣も非常に重要で、週3回、1回30分程度の有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を続けることで、HDL-C(善玉コレステロール)を増やし、LDL-Cを下げる効果が期待できます。

禁煙も重要な要素で、認知症の修正可能なリスク因子として高コレステロールが新たに認識されていることからも、包括的な生活習慣の改善が求められています。

定期的な健康診断で血液検査を受け、自分のコレステロール値を正確に把握することも欠かせません。

LDL-Cの目標値は個人の心血管リスクによって異なりますが、認知症予防の観点からは70mg/dL未満が一つの指標となります。

医師と相談しながら、適切な目標設定を行うことが大切です。

 

研究結果が示す新たな希望

この研究結果について、フロリダ州の神経科医シャチーン・ラカーン博士は、「これまで脳にとって"安全"で有益な数値を明確に示すことは困難でしたが、この研究により具体的な目標値が示されたことは極めて有用です」とコメントしています。

また、英国の専門家らも、「この結果は研究者に対し、従来の治療法に加えてLDL-Cを考慮すべきという説得力のある議論を提供している」と支持を表明しています。

一方で、この研究は後ろ向き研究(過去のデータを分析する研究)であるため、因果関係を完全に証明するものではありません。

今後、より詳細な臨床試験により、LDL-C管理と認知症予防の関係がさらに明確になることが期待されています。

 

まとめ:今日から始められる認知症予防

認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、適切な予防策により、そのリスクを大幅に減らすことができます。

LDL-Cを70mg/dL未満に管理することで、認知症全体のリスクを26%、アルツハイマー病関連認知症のリスクを28%も減らせるという研究結果は、私たちに大きな希望を与えてくれます。

コレステロール管理は、心血管疾患の予防だけでなく、脳の健康維持にも重要な役割を果たすことが科学的に証明されました。

日々の食事改善、適度な運動、定期的な健康チェック、そして必要に応じた薬物治療により、認知症のリスクを下げることができるのです。

認知症予防は、決して高齢になってから始めるものではありません。中年期からの生活習慣の改善が、将来の脳の健康を左右します。

今日から始められることがたくさんあります。まずは自分のコレステロール値を知ることから始め、医師と相談しながら適切な管理計画を立てることをお勧めします。

健康的な老後を迎えるために、コレステロール管理を通じた認知症予防に、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 

※本記事の内容は2025年6月時点の最新の医学的知見に基づいています。個別の治療方針については、必ず主治医にご相談ください。

記事監修:脳神経内科専門医・総合内科専門医 尾畑 十善

Lower LDL of ‘Critical Importance’ in Reducing Dementia Risk

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