甲状腺外来
当院では、甲状腺に関する異常やホルモン分泌にまつわるさまざま疾患・治療のご相談にも幅広く対応いたしております。甲状腺疾患は年齢問わず起きやすい病気であり、「なんとなく体調が優れない」「しっかり寝ているはずなのにだるさが続く」など、ご自身でもなかなか表現しづらいあいまいな症状を感じやすいことも初期の段階では特徴的です。当院では臨床経験を重ねてきた内分泌代謝専門医が常勤しており、症状の改善を図るため様々な治療提案を行っております。気になる症状や不安をお感じの場合にはどうぞお気軽にご相談ください。
そもそも甲状腺とはどんなもの?
新陳代謝を促進し、エネルギーを生み出す重要な拠点
甲状腺とは、喉仏の下にある蝶の形に似た臓器で、甲状腺ホルモンを分泌して私たちの身体の新陳代謝を調節しています。甲状腺ホルモンは、各器官の新陳代謝を活発にして必要なエネルギーを作り出し、生命維持に不可欠な心臓機能を調節しています。この甲状腺に何らかのトラブルが生じてしまうと、全身のさまざまな不調を引き起こしたり、外から手で触れてもわかるほどに甲状腺が腫大します。
甲状腺ホルモンの主な働き
甲状腺疾患は専門性の高い検査・診断が必要となる病気です
甲状腺にまつわるトラブルは20歳代〜更年期頃の女性に現れることが多く、そのため患者さんご自身も自律神経失調、更年期症状、加齢による影響と思い違いをされてしまうケースも少なくありません。ホルモンに関する異常の有無については、甲状腺ホルモンを測定しなければ見つけ出すことができないため、まずは適切な検査をお受けいただき診断をつけることが重要となります。
代表的な症状
甲状腺疾患においては、患者さんご自身でもなかなか言葉にして説明しづらい症状やお悩み事が多いという点が大きな特徴として挙げられます。そのため長期にわたって放置されることも珍しくありません。その一方で、急激な痛みや発熱を伴うケースもみられるため注意が必要です。
症状が非常に多岐に渡るがゆえに他の疾患と混同される可能性も―
更年期症状をはじめ、自律神経失調症、鬱や認知症などといった疾患とも非常に良く似通った症状となるため、まずは詳しい検査をお受けいただくことが重要となります。以下の項目に複数該当する場合には、まずは当院を一度ご受診いただき、専門医にご相談いただくことを強くおすすめします。
【ホルモン分泌が過剰となることで起こりやすい症状(例)】
- 動悸がする
- 息切れ
- 多汗
- イライラ
- 手の震え
- 過食
- 痩せやすくなった
- 眠りが浅い
- 下痢
- 疲れやすい
- 月経不順 など
【甲状腺の機能低下によって起こりやすい症状(例)】
- 首の腫れ
- のどの違和感
- 冷え
- 食欲低下ながらも太りやすい
- 疲れやすい
- 声が枯れる
- 肌の乾燥
- 肌のかゆみ
- むくみ
- 便秘
- 十分寝ているはずだが昼間も眠い
- やる気が出ない
- 体が重い
- 月経不順
- 不妊
- 流産
- 早産 など
診断に必要となる各種検査について
一般的には血液検査と超音波を用いた画像検査の2種を組み合わせることで異常の有無を明らかにすることが可能です。バセドウ病眼症が疑われる場合には、当院ではさらに高度なMRIを用いた検査をお受けいただくことも可能です。
触診
甲状腺部分の腫れの有無を、まずは医師が手で触って調べます。
血液検査
血中内の甲状腺機能に関連するホルモン(TSH・FT3・FT4)や甲状腺疾患の原因となる自己抗体(抗TPO抗体、抗TG抗体、TSH受容体抗体など)の量を測定する検査です。
超音波を用いた画像検査(エコー検査)
甲状腺の腫大の有無、性状を明らかにするだけでなく、腫瘍の有無なども確認します。
MRI検査
磁気の力を用いてさらに高精度な内部構造の確認や血管内の様子まで明らかにすることができます。診断の結果、さらに詳しい造影検査などが必要となった場合には、当院より近隣の高次医療機関へ随時ご紹介することも可能です。
代表的な疾患
甲状腺疾患においては、「過剰なホルモン分泌によって生じる疾患(亢進性)」か「分泌量の低下によって生じる疾患(機能低下)」の2種に大別されます。
過剰なホルモン分泌によって 生じる疾患(亢進性) |
バセドウ病 亜急性甲状腺炎 無痛性甲状腺炎 プランマー病 など |
分泌量の低下によって 生じる疾患(機能低下) |
橋本病 甲状腺摘出後 甲状腺治療後 薬(抗がん剤など)の副作用によるもの など |
バセドウ病
甲状腺が異常な活発を起こし甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。自分自身を攻撃する自己免疫疾患の一種で、比較的若い女性に多くみられやすい疾患となります。発熱や動悸、息切れ、皮膚の異常、強い倦怠感など全身に渡るさまざまな症状が特徴的に現れるようになるほか、眼球の突出がみられるケースもあります。現在のところ発症原因は不明と考えられていますが、遺伝的な要因やストレス、過労などが引き金になる可能性も指摘されています。
橋本病
橋本病は若い世代から中高年の女性に多くみられる比較的発生頻度の高い病気です。甲状腺からのホルモン量が何らかの原因により減少してしまうことで、新陳代謝が阻害される病気です。無気力や冷え、皮膚の異常や脱毛、睡眠障害などといった全身に渡るさまざまな問題を生じやすく、治療においては不足したホルモン量を補うための長期の投薬治療が必要となります。
バセドウ病における治療の選択肢について
投薬による治療法 | 甲状腺の働きを抑制する薬を服用することで全体のバランスを正しくコントロールする治療法 メリット
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放射線ヨウ素治療 (アイソトープ治療) |
放射線を放出するカプセルを服用することで、細胞内側から甲状腺を破壊して小さくすることで過剰なホルモン分泌を抑え込む治療法 メリット
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手術治療 | 甲状腺自体を手術で取り除くことでホルモン分泌を抑える治療法 メリット
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投薬による治療法を選択される場合には、患者さんお一人お一人において副作用の有無についての詳細な確認が不可欠となります。医師による診察と検査を用いた数値確認があわせて求められるため定期的な通院が必要となります。副作用による症状が強い場合には、他の治療法への切り替えや検討が必要となります。
橋本病の治療法について
内服薬を用いて、不足している甲状腺ホルモンの補充を行う治療法が基本となります。症状が安定してくると、半年に1回程度の血液検査によって状態確認を行うことが可能となります。
当院の診療方針
投薬による治療法を選択される場合には、服用を中断しないことが何よりも重要なこととなります。当院では患者さんの日常生活に対する負担を最小限に抑えられるよう、患者さんのお気持ちに寄り添った治療方針の決定や、無理のない通院プランの立案・検討に力を入れて取り組んでおります。専門的な内容も多くなる難しい疾患についてのご説明についても患者さんが病気について質問しやすい外来になるよう心がけております。
当院では内分泌代謝の専門医資格を有する経験豊富な医師がご相談にお応えします
当院には専門性の高い知識と臨床経験豊富な内分泌代謝専門医が患者さんからのさまざまなご相談にお応えいたしております。ご不明点等ございましたらお気軽に担当医師までご相談ください。
さらに高度な治療や検査が必要となった場合にも、近隣の高次医療機関と密に連携し、力強くサポートいたします
診断の結果、さらに高度な治療や検査が必要となった場合には、近隣の高次医療機関やご希望される医療機関とすみやかに連携し、切れ目なく患者さんの治療をサポートいたしております。
連携医療機関例
- 九州がんセンター
- 国立病院機構 九州医療センター
- 早良病院
- 白十字病院
- 福岡記念病院
- 福岡山王病院
- 福岡大学病院
- 福西会病院
- 福西会南病院
- 村上華林堂病院 など(50音順)
甲状腺の機能異常による症状は適切な治療を加えれば必ず症状の改善が見込めます
甲状腺に関する疾患は専門性の高い知識を要する病気となるため、大きな病院に行かなければ治療できない病気であるというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。当院では内分泌代謝専門医による甲状腺外来を設けており、精度の高い診断と治療をお受けいただけます。甲状腺の働きや仕組みについては難解なお話も多くなるため、治療内容についてはしっかりとわかりやすい言葉を用いてご説明することをスタッフ一同心がけております。亢進性のバセドウ病などは適切な治療を開始できれば、お悩みの症状が劇的に改善される方も少なくありません。専門医とご一緒に二人三脚で根気強い治療に取り組まれることを大切に、まずは異常の早期発見に努めていただきたいと切に願います。すでに当院にて治療を開始された患者さんにおかれましては、何か気になる症状の変化が見られた場合にはすみやかに当院医師までご相談ください。